退去時の立会いについて
賃貸借契約は、退去の予告を受けて鍵を返還いただく事で終了します。鍵の返還と同時に敷金の精算も出来れば良いのですが、実務上はタイムラグが発生します。鍵の返還は、現地のお部屋にて入居者様と管理会社のスタッフがお部屋の中を一緒に確認して行うのが一般的です。（管理会社によっては立会をしない場合もあります）
現地では、入居前の状態と荷物が片付いた最終の状態を一緒にみます。入居中に不具合はなかったか？ご自身で傷めたり汚してしまった箇所はないか？などをヒアリングします。特に入居中に気になった点などは次の募集やお部屋の修繕に活かせる貴重な情報源です。あまり時間は掛けられませんが入居していた方に教えていただいて学ぶことはたくさんあります。
同時に、電気・ガス・水道・インターネット・家財保険などの解約手続きの確認、郵便局への郵便物の転送手続きが出来ているか？などもお聞きしています。
当社は、松山市や大洲市など店舗のある地域以外にも管理している物件があります。遠方での立会いなどは時間を要するのですが、なるべく出向いて現地で立ち会い鍵を受け取るようにしています。それくらい退去時の現地確認や入居者様から得られる情報は貴重なんです。
退去の立会いで、「どのような管理業務が出来ていたか」「ちゃんとした契約が出来ていたか」答え合わせをするようなそんな感覚です。入居者様からお叱りを受ける事もありますし、お礼の言葉を頂く事もあります。どちらにしても貴重なご意見とありがたいお言葉です。
ある時、卒業して退去する学生さんのお部屋に行った時の事。一通り点検と確認を終えた後、部屋を出て解散しようとしたら「ちょっと待ってもらえませんか？」と言われました。なにかあるのかなと様子を見ていたら、どうやらその方は記念にお部屋の中の写真を撮っていたようです。キッチン、洋室、お風呂、景色、玄関、玄関までの廊下やエントランスまで。なんだかその姿を見守りながら、そのなんとも微笑ましい光景にあったかい気持ちになったのを覚えています。最後に「あ～もうこの景色見れないんだ」ってポツリと口にし泣きそうになっていた様子を見て、なんだかこちらももらい泣きしそうになりましたっけ（笑）
賃貸契約期間の間の一つのドラマが幕を降ろした一場面。こういう仕事をしていないと出くわさない場面です。
退去後の精算業務について
退去立会が終わると精算業務に移っていきます。昔は敷金の預かりのある契約が多かったのですが、最近では敷金の預かりの無い契約（クリーニング費や退去時清掃分担金などの名目の預かり金がある契約）が増えてまいりました。それらの契約は精算業務を簡略化させ、スピード感をもって精算する効果をもたらしました。
冒頭に退去時に立会いを行うと書きましたが、現地の確認を一緒に行う事でスムーズに精算業務が進むとも言えます。そういった意味でも退去時の立会は必要です。
精算の流れについて、
まずは見積もりの取得。その見積もりから貸主様負担、借主様負担を振り分けていく事になります。振り分けていくために、「ガイドライン」「特約条項」「契約内容」「契約期間」「入居した時の状態」「退去時の状態」「設備の状態」「退去時にヒアリングした内容」などの情報を参考にしていきます。精算書を作成して、貸主様と借主様双方の合意を得て精算が進んでいきます。「入居時のチェックシート」があればよりスムーズな精算が出来ます。
いずれかあるいは双方から合意が得られずに調整に時間がかかる場合も稀にあります。間に入った管理会社の役割が重要です。
原状回復について、
「原状回復」とは契約上もとの状態に戻す意味になります。元に戻すと言っても新品で返す。といった意味ではありません。よくレンタカーに例えて説明するのですが、「借りた期間に減ったガソリンは補充して戻すけれど、すり減ったと思われるタイヤはそのままで」という感覚が当てはまりそうです。
少し余談ですが、有るものは有るままで、無いものは無いままで。という事も「原状回復」に関わってきます。ご自身で搬入した家具家財を持ち出すのはもちろん、例えば設置ししたエアコンだったりガスコンロなども持ち出す事になります。またその逆で設置してある設備のエアコンを持ち出しては問題が出てきます。そういった確認も現地での立会いや精算業務の中で行っていくことになります。
退去後の精算業務をスムーズに早く進めていく事は、貸主様にとっても借主様にとっても望まれる事です。もしも時間が余計にかかってしまえばお部屋の改装や清掃が出来ず、すぐに次の方に貸す事が出来ずにチャンスロスを生みます。退去をした方だって、いつまでも前住んでいた賃貸物件の事が片付かないのは落ち着きません。
退去立会いや退去後の精算業務は、不動産管理会社にとって、とても重要な仕事の一つとなります。知識も経験も必要です。特に繁忙期だったり、月末には退去が集中するのでスケジュールをしっかりと立ててご契約者の方やオーナー様に迷惑や余計なご心配をお掛けする事のないようにしたいものです。
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