不動産の売買には、まず媒介(ばいかい)契約というものが必要になります。売買と媒介。言葉の響きが似ているので勘違いをされる方も多いかと思います。売買はよく聞く言葉だけど「媒介」ってなに?と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。分かりやすくいいますと、媒介とは仲介と似たような意味になります。「仲介」とは売主さん、買主さんの間に立って双方の契約をする事を指し、「媒介」は、売主さんと、また買主さんとも不動産会社がそれぞれと結ぶ契約の事を表します。「仲介」と少し違うかもと思うのは、その仲介を行うための条件(業務の内容や報酬額である仲介手数料の金額)などを取り決めしておくことが「媒介契約」という事になります。「仲介」とは広く一般的に使われる用語。「媒介」は、宅地建物取引業法(通称:宅建業法)で出てくる法律用語という言葉の違いでもあります。
この「媒介契約」は、不動産の売買に関連して必要となる契約です。賃貸の場合は義務化されていない為、このような契約を取引の事前にする事はありません。
媒介契約は下の表にありますように、①専属専任媒介契約、②専任媒介契約、③一般媒介契約の3つの契約形態があります。
①専属専任媒介契約
売主さんにとって一番制約が多いのが「専属専任媒介契約」となります。複数の不動産会社と交わす事が出来ず、仮に自分で「買いたい!」という希望者を見つけたとしても、媒介契約を交わした不動産会社の仲介が必要になる縛りがあります。その分、不動産会社側としては、不動産流通機構(通称:レインズ)というサイトへの登録を媒介契約締結の翌日から5営業日以内にする事。7日に(1週間の間に)1回以上の間隔で状況報告を行う事が義務付けられます。不動産会社は、媒介契約の期間中はその物件が契約の際に必ず仲介に入ることが出来ます。報酬を得られる確実性があるため、営業に専念してより力を入れて活動してくれると言えるでしょう。
②専任媒介契約
専任媒介契約も、複数の不動産会社と同時に交わす事が出来ないという点は同じですが、自分で買い手を見つけた場合に、不動産会社の仲介を入れずに直接契約をすることも可能という違いがあります。それでも媒介契約を交わした不動産会社は、他の不動産会社に契約を取られてしまう心配はなく、状況報告の頻度が14日に(2週間)1回と緩和される違いがあります。
③一般媒介契約
最後に、一般媒介契約について。先の2種類の契約のような不動産会社の義務はなくなりますが、依頼する売主さんにとっても、複数の不動産会社に頼むことが出来るというメリットがあります。賃貸と同様に、不動産売買にも会社によって得手不得手があったり、それによって査定額に違いが出てくる事もあります。そのため、複数の会社と話をしたい。複数の会社で買主さんを探してもらった方が窓口が多くなる分、早く成約に繋がりそうだと思う事でしょう。もちろん窓口が広がる事は紹介される機会が増えて良い面もありますが、いくつかの会社が関わるため、不動産会社にとっては「成約出来る」という保証が薄れてしまいます。リアルな表現をすると募集や宣伝にあまりお金を掛けられないと言えます。
いずれにしましても販売活動を始める前に不動産会社との間で媒介契約を交わします。それぞれの違いを見比べながら選んでいく事になります。どの契約内容が一番良いかはケースバイケースで変わってくると思いますが、不動産会社は「専属専任媒介契約」をおすすめする可能性が高いと思われます。それは、他社の介在が入らずに営業に専念できるからという上記の理由からですが、せっかく3種類ある契約内容ですのでご自身にあった選択をしていただくべきだと思います。